※パラレル注意 (RAMENTOというゲームをプレイして、ネコ耳に目覚めたときに書いたものです。苦手だと思われる方は見なかったことにしてください。
猫化・猫攻めなど)
にやーん…と小さく鳴く猫とは違う。甘えた声など一切出さない。彼は、低く喉を鳴らす獰猛な虎といったほうが正しいだろう。だがどちらであっても、そういった動物は、愛らしいことには変わりないのだと、古い友人は言う。古来より猫科の動物とは、神聖な、高貴な身分を象徴するペットとして飼われてきた生き物だ。蒼く澄み切った双眸など、トルマリンのように美しく、金髪に近い、麦色の毛並みは見事なものだ。随分と血統の良い猫だろう。
これを拾ったのに、特に理由があったわけではない。元飼い主の手を離れて、
行き場を無くしていた彼を、なんとなく動物好きの上司ならば、気に入って大切に飼ってくれるだろうと、紹介してやっただけだった。普段の己ならば、そんなお節介は焼かぬはずだが、そのときは何故か彼を見捨てることができなかったのだった。行き倒れて、衰弱して、途方に暮れていたわけではない。彼はただ、次の当ての無い目的地を目指していただけだ。彼が、一人でも生きてゆける性分だと知りながらも、僅かばかりの憐憫が、ジェイドの脳裏を過ぎたのだった。
動物はあまり好きではない。特に、猫は嫌いな部類だった。音もなく近づいてきて、足首に包まるように擦り寄ってくる感触など、ぞっとするほどだった。ガイラルディアという名の彼は、他人に擦り寄ったり懐いたりはしない。頭がよく、猫のように、気まぐれに媚びることもないし、気まぐれに離れていくこともない。言われたことはこなすし、用がないときは、ジェイドの友人である王の側に、側仕えとして整然と控えていた。おかしなことに、犬のように忠実な性格だったのだ。
王は寛容な方だ。だから、ガイラルディアの午後は職務から解放されて、自由の時間となる。午後からは、街の外へ出かけていくこともあるだろうし、そこで何をしているのかは、ジェイドや王の知るところではなかったが、夕方から夜にかけて、頻繁にジェイドの執務室に顔を出してきた。家に帰る前にちょっと寄っただけだというが、ガイラルディアの家や街とは逆方向の軍事基地に、果たしてどれだけの者が気軽に寄れるかどうかは定かではない、…とはいえそんなことはどうでもいい。
ガイラルディアを拾ってきた張本人はジェイドだ。彼はジェイドに対して、いくらかの負い目があるらしいので、他の者へとは違う視線を送ってきた。お互いの性格も、原因にあるのかもしれない。誰にでも優しいととれる彼の行動は、ジェイドに対してはいくらかぎこちなかった。
彼は、二分の一の確立で、手土産の菓子を持っていた。たまに、大きな買い物をしていることもあるが、それは自分のための買い物らしく、家にもって帰るのだと言っていた。その袋、何が入っているのかと聞こうとすれば、まってました聞いてくれとばかりに目を輝かせていたので、話を逸らして聞くのをやめておいた。残念そうに、両耳が斜めに垂れ下がるのが面白く、ジェイドはそのまま筆を紙面に滑らせる。
ガイラルディアは物静かな猫だった。押し迫る仕事に没頭していれば、うっかり側にいるという存在を忘れてしまいそうなほど、二人の時は無口であった。時計が日付を塗り替える時刻まできて、まだソファに寝転がっている彼を、そういえばまだ居たな、と思い出し側に寄ってみる。いつもは、菓子を置いて半時もせずに帰るはずだ。小さく上下する胸を見遣り、何だ寝ているのかと思ったが、彼は目を開けてぼんやりと宙を見上げていた。端正な横顔には表情がない。前髪で隠されてしまう瞳を伺えない、ジェイドは上から覗き込むようにして、身を乗り出した。表情が無い、というよりも、どこか寂しげで諦めを滲ませるような瞳の色をしていた。
ガイラルディアは、はっとした表情をした。ガイラルディアの色白の顔に、苦笑に似た笑みが浮かぶのを、ジェイドは意外な気持ちで見つめていた。何が意外なのかって、夜の闇の中で浮かぶ、尖った瞳孔も、気味が悪いだけで綺麗だと思ったことはかつて一度も無いはずだったが、これも悪くないと感じてしまう自分にだった。
それからの彼は、いつもどこか上の空だった。仕事はきちんとこなしているし、夜には執務室に顔を見せるものの、ぼう、としていることが多くなったのだった。
様子のおかしいガイラルディア。
何があったのか問い詰める気も無いジェイドは黙々と筆を進める毎日だったが、いつしか彼はそんなジェイドに見切りをつけたかのように執務室に来なくなった。秘書官が寂しそうにしている様子を、ジェイドはいっそ他人事のように思った。
時折、彼は物言いたげにジェイドを見つめて口を開きかけることがあった。思いつめた顔だった。だが、ジェイドは気付かないフリをした。何を言われるか、だいたいわかっていた。ガイを止める権利が、ジェイドには無いのだから、押し付けがましく了承をとられるのも嫌だった。
寂しいのですか。帰りたいのですか。昔に戻りたいのですか。昔の優しかった飼い主が恋しいですか。それともひとりで生きていきたいですか。どこか、別の場所へいくのですか。ここでは、満足に暮らせませんか。ここには、もう、居られませんか。
頭の中では幾らでも聞ける。だがそれを口に出すことは、ジェイドが自我を捨てない限りは、絶対に無いことだ。日に日に精神を疲弊していくように見える彼を言葉で止める権利も無いのだから、こうして遠ざけて、逃がしてやるしかないではないか。もしくは言葉で遠ざけてやれたのならばどれほど互いが楽になるだろうかと思えども、それは嘘でもできそうにない。連鎖する思考を打ち止めて、いつものように無感情の顔をつくりあげると、自然と気持ちもそれに呼応するふうに収まってきた。
もともと淡白な性分であるし、理性で操作しようとすれば、感情を打ち消すこともできるのが大人だ。
そう思って、彼の気配がなくなった町での元の生活が、緩やかに戻ってきはじめたある日。やはり唐突に彼が手土産の菓子を片手にぶら下げて、にこやかに顔を出してきたときの怒りたるや、理性なんてもの、警戒レベル4までの防衛装置に過ぎないことを悟ったのだった。
ジェイドは不機嫌そのものの声色で、久しぶりですねと嫌味を込めて言った。秘書官に礼を言い、後ろ手にドアを閉めたガイラルディアを、いつもの冷めた笑みで見つめた。彼は、何をそんなに怒っているのかわからないといった顔だった。ジェイドだってそうだ。
「どうして出て行かなかったのですか?」
「どうして俺が出て行かなきゃらならないんだ。俺は、自分でここに来ることを決めたんだがね。それとも、アンタは俺を追い出したかったのか?」
ガイラルディアは人に懐かない。どれほど他人に従っても、本心は誰にも触れさせない。とくにジェイドには、つんけんした言い方しかしない。だがその語感は、どこか言葉遊びを味わっているような躍動がある。
それからの彼は毎日かかさず、夜に尋ねてくる。今までのように、菓子を食べたりソファで静かに眠っているだけだ。それでも、まれに仕掛けられる酔狂な悪戯に、ジェイドは困惑することもある。でもまあ可愛いといえる程度のことなので、抵抗する気も起こらない。両手を両手で捕らえられ、壁際まで追い詰められ、くちづけられる。自分からしてきたくせに、尻尾を大きく揺らして頬を染めて、息を荒くしているガイラルディアは、肩口に埋まったを金髪をかすかに持ち上げる。ジェイドの頬をやわらかい髪と耳が撫でてゆく感触。それから白い頬にふれたくちびるから、小さく呟かれた言葉は、感謝の言葉だった。
後日、ガイラルディアが一時期精神を病んでいた理由を、「あー、発情期だったらしいぞ。それで仕事も休んで引きこもっていやがった」となんと王から聞くはめになったジェイドは、今度会ったらお仕置きですねえと小さく口の端を上げた、とか。
おそまつ!

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久しぶりなのに微妙なネタです。苦手な方は申し訳ないです。よ、読まないでー!長いのでサイトに上げます。ねこみみです!猫耳だらけのramentoはいいですよ!主人公攻めもあればもっと良かったですよー。耳付のジェイドも書きたいけど、どうみてもうさぎになるだろうね。そうだねうさぎだね。